偽りの愛に終止符を、真実の愛に永遠の誓いを Cover SCANDIUM CoverKakak Kelas CoverDown Under CoverMirror Wall CoverVengeance of Hope CoverLegend of the Empyrean Blacksmith Cover偽りの愛に終止符を、真実の愛に永遠の誓いを Coverxiaoxiao CoverHis Desired Phoenix  CoverTest The Luna Is Gone CoverMarked by the Moon Cover11 CoverFAKING LOVE CoverKidnapped and Rejected - The Return of Alpha's Luna Cover雨上がりの虹、永遠の誓い CoverUnder The Incubus's Protection Cover魂縛りの薔薇と囁きの鏡 CoverThe Luna Is Gone Gone CoverThe Billionaire's Bodyguard CoverMy Books updates. CoverThe luna is gone CoverThe Rejected She-Wolf’s Return CoverAfter Divorce: Loved by the Secret Billionaire CEO  Cover双極の星、囚われの月 CoverLOVE OVER CAPPUCCINO CoverSold to the Billionaire  Cover偽りの仮面と真実のキス CoverThe Triplet's Mom and Her Unwanted Husband Coverシンデレラ・リターンズ Cover純愛の仮面 CoverLuna Cover苦橙の香りは愛のしるし CoverQUEEN OF THE PACK Cover傲慢な薔薇の棘:偽りの愛と再生のプレリュード CoverThe Luna Is Gone CoverThe CEO and His Secretary's Secret CoverNot Just A Luna; I Am Alpha! CoverDestiny of Love, My High School Lover  CoverThe Billionaire's Unfulfilled Love Coverbook~15 CoverLOVE ME, BABY CoverA CONTRACT MARRIAGE WITH THE BILLIONAIRE'S MAD SON Cover悪役令嬢は華麗に散る~転生先は悲劇の始まり~ CoverThe Wedding Disaster  CoverThe Repulsive Bride Cover
偽りの愛に終止符を、真実の愛に永遠の誓いを
by 1
Ongoing
Synopsis
Table of Contents
Updated 2026-01-28
第一章:幻滅の序曲
第二章:身代わりの覚醒
第三章:二重の打撃と完全な決別
第四章:絶望の中の微かな光
Chapter 1

若宮淳(わかみや じゅん)は、午前三時の着信音で叩き起こされた。ディスプレイには「相良清隆(さがら きよたか)」の名前が冷たく光っている。
「はい」
掠れた声で応答すると、電話の向こうから低く、感情の読めない声が響いた。
「月影(つきかげ)に来い。例の企画書だ」
月影。六本木の夜に煌めく、会員制の高級クラブ。相良清隆が懇意にしている店だった。
「…今すぐ、ですか?」
「ああ。十分で来い」
一方的に切れた通話に、淳は深いため息をついた。ベッドから這い出し、クローゼットから地味なスーツを取り出す。もう何年も、彼の深夜の呼び出しには慣れていた。

タクシーを飛ばし、月影に着いたのは十五分後だった。息を切らしてエントランスを抜け、彼の指定した個室へ向かう。磨き上げられた重厚な扉の前。ノックしようとした手が、ふと止まった。
親指一本分ほどの隙間から、聞き慣れた声と、知らない男の声が漏れ聞こえてきたのだ。
「で、相良。若宮のこと、どうするつもりだ?秘書にしては可愛がりすぎじゃないか?」
それは清隆の友人、確か桜井(さくらい)という男の声だった。
淳は息を飲んだ。心臓が嫌な音を立て始める。
やがて、清隆の静かな声が響いた。
「遊びだ。本気にするな」
一瞬の沈黙。そして、決定的な一言。
「それに、相良の本家が、あんな女を許すと思うか?たかが秘書だ。せいぜい、愛人どまりだろう」
淳の手が震え、持っていた企画書の封筒が床に落ちそうになるのを、必死で堪えた。
呼吸が止まる。頭が真っ白になった。
遊び…愛人どまり…
その言葉が、ナイフのように淳の胸を突き刺した。

これ以上、聞いてはいられなかった。
淳は踵を返し、近くにいたウェイターに企画書を押し付けるように渡した。
「相良社長に、と」
それだけ言うと、逃げるように月影を飛び出した。外は、いつの間にか土砂降りの雨になっていた。傘なんて持っていない。冷たい雨が、淳の頬を叩き、涙なのか雨なのか、もうわからなかった。
空っぽのタクシーを捕まえ、自宅マンションへ向かう。雨音が、まるで淳の世界を全て飲み込んでしまおうとしているかのように、激しく窓を叩いた。

彼、相良清隆と出会ったのは、大学の入学式。新入生代表として挨拶する彼の姿は眩しく、淳は一瞬で恋に落ちた。それから四年間、遠くから彼を見つめるだけの日々。卒業後、奇跡的に相良グループの社長秘書として採用され、夢が半分叶ったような気がした。
そして、さらに二年後。彼の指が初めて彼女の肌に触れた夜。それから四年、彼と社長と秘書、そして夜は恋人という歪な関係が続いていた。
八年間。私の八年間は、彼にとって「遊び」でしかなかったのか。

びしょ濡れのまま部屋に入ると、タイミング悪く携帯が鳴った。実家の父からだった。
「淳か?例のお見合いの話、どうなった?お前ももう、いい歳なんだぞ」
「……」
「明日までには返事をすると言っただろう。相手方も待っておられるんだ」
父の心配する声に、淳はかろうじて答えた。
「…うん。明日…明日には、必ず返事するから」
電話を切り、淳はソファに崩れ落ちた。結婚。そんなもの、清隆以外考えたこともなかった。

どれくらいそうしていただろうか。玄関のドアが開く音で、淳は我に返った。清隆が帰ってきたのだ。いつも彼が使う合鍵の音。
彼はリビングに入ってくると、びしょ濡れの淳を見て眉をひそめた。
「どうした、その格好は」
「…雨に降られて」
「そうか」
彼はそれ以上何も言わず、ネクタイを緩めながら淳に近づいた。そして、濡れた髪を無造作にかき分け、唇を重ねてくる。
淳の体は、彼の愛撫に慣らされていた。だが今夜は、人形のようにされるがままだった。彼の熱が伝わってくる。けれど、淳の心は凍りついたままだった。
寝室に運ばれ、乱暴に服を剥ぎ取られる。彼の重みがのしかかり、いつものように求められる。
彼の荒い息遣いと、自分の心の空虚さの対比が、淳をさらに絶望させた。
行為が終わった後、清隆はすぐに淳に背を向けた。いつものことだ。

暗闇の中、淳は震える声で、最後の望みを託して尋ねた。
「清隆さん…」
「なんだ」不機嫌そうな声。
「あの…父が、結婚を急かすの」
「……」
「私も、もう…そういう年齢だし…もし、清隆さんに少しでもその気があるなら…」
そこまで言って、淳は言葉を切った。怖くて、彼の顔が見られない。
しばらくの沈黙の後、清隆はゆっくりと振り返った。暗闇に慣れた目が、彼の冷たい表情を捉える。
「そうか。いいんじゃないか」
彼の声には何の感情もこもっていなかった。
「お前の人生だ。よく考えろ」
淳の心臓が、ギリギリと音を立てて軋んだ。
「なんなら、俺がお前の相手を見定めてやってもいい」
その言葉が、とどめだった。
ああ、そうか。本当に、ただの遊びだったんだ。
彼の目に映る自分は、都合のいい女でしかなかった。結婚なんて、万に一つも考えていなかったのだ。

涙が、とめどなく溢れてきた。だが、声は出なかった。
清隆はそれに気づく様子もなく、再び淳に背を向け、やがて寝息を立て始めた。
淳は、暗闇の中で静かに泣き続けた。
八年間の恋が、終わった。いや、終わらせなければ。

翌朝、清隆がまだ眠っている間に、淳は身支度を整えた。
そして、リビングのパソコンに向かい、一文字一文字、力を込めてタイプした。

「辞職願」と。

まだ微かに雨の匂いが残る窓の外を、淳は虚ろな目で見つめていた。
これから、どうすればいいのだろう。
いや、まずはこの関係を終わらせる。それからだ。
ふと、昨夜の父の言葉を思い出す。「明日までには返事を」。
その「明日」が、もう来てしまっている。
淳は、重い決意を胸に、印刷されたばかりの辞職願を、そっとハンドバッグにしまった。
清隆の会社へ向かう足取りは、まるで鉛を引きずっているかのようだった。